ニュース
2021.11.15
コラム
開幕目前!北川フラム総合ディレクター連載「しっかり毎日フラム新聞」 第9号
今日は月崎・田淵地区の作品についてのお話です。
北アルプス国際芸術祭では大町の高瀬川にある石積みのロックフィルダムが聳え立つ土地に風の強さを表す石の模様がダイナミックに表されていて大人気の「不確かな風向」ですが、これはダムができて渓谷の風向きが変わったことを表しています。自然と人間社会の関係を示し続けて地域での芸術祭に決定的な方向を教えてくれた磯辺行久のプロジェクトです。
磯辺さんは市原の田淵の里では「6000年前、養老川の本流がここを流れていた」「養老川を翔ぶ」というタイトルでチバニアンの地層を見ることができる土地を対象に選びました。チバニアンは77万年に起きた最後の地磁気逆転現象を連続的に捉えることができる地層ですが、養老川を上ってくる風のおかげでそれが見えるのです。地球環境の変化は東京湾に台風が入ってくる頻度を増しています。この土地を知ろうとするには大切な視点で、11月19日のオープンの日には熱気球を飛ばして眺めおろすこともやるそうです。乞ご期待!
月崎の里にはたびたび触れるアイシャ・エルクメンの奇想天外の圧倒的な作品があり、その向かいには氷河やゴールドラッシュ等、地球を撮ってきた骨太のカメラマン石塚元太良の展示スペースがありますが、この近くに田圃を盛り上げた不思議な舞台があります。オランダのエルモ・フェアメイズの作品で、対面で反射している違う音が聞けるとスタッフは面白がっています。
月崎駅には長年大人気で地元の人たちも頑張っている木村崇人の「森ラジオ ステーション×森遊会」があり、芸術祭の華ならぬ蔦むした鉄道作業小屋はアート×ミックスのシンボルです。木村さんは大町でも木崎湖のそばに湖を見る部屋を作っています。
最後がクオードの森。小沢敦志は長年市原市民が持ってくる金属(鉄)を鍛いて巨大なオブジェを作ってきました。迫力万点だ。
その森に市原市民である栗田宏武の工房があってそのチェンソー作品がたくさん見ることができます。栗田さんは全国大会第一位の名人で、会期延長になったことで、あり得ないはずの市原湖畔美術館での戸谷成雄展と競作になりました。こんな楽しみも滅多にあることではありません。
ことほど左様に、この地区には個性ある不思議なアーチストが集まっているのです。
(11月15日)
北川フラム総合ディレクター連載「しっかり毎日フラム新聞」
第1号第2号第3号第4号
第5号第6号第7号第8号
第9号第10号第11号最終号