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2021.11.16
コラム

開幕目前!北川フラム総合ディレクター連載「しっかり毎日フラム新聞」 第10号


 作品制作も大詰めで、各サイトから報告があがってきています。

 五井駅。ロシアのアレクサンドル・ポノマリョフの「永久機関」が完成です。小湊鉄道五井機関区には昔ながらの鍛冶屋場があるのですが、転轍機がいたるところにあり〈チャーリーのチョコレート工場〉や〈バック・トゥ・ザ・フューチャー〉の実験室さながらの楽しいところです。この良さを知っていただこうと小湊鉄道の皆さんが検討して、安全に限定的に見ていただけるようにしてくださいました。
 ここにはチョアン・チーウェイの電光掲示板、ザンナ・カダイロバの住んでいるウクライナと日本は昼夜逆転していることに想を得た列車内を夜行列車に変える作品と、ポノマリョフの「Questions of Evolution -進化の問題-」と題された三転の機関車が交錯する線路があります。その鍛冶屋さんの中にもう一つ、上下運動する永久機関二基を設置したのです。人間と機械の関わりを伝えてくれるダイナミックな作品です。

 
 
 ホームにはレオニート・チシコフの「水もなく月もなく あるいは桶の中の7つの月」があり、ターニャの「門」と名付けられた、終点養老渓谷近くの「空への階段」へと続く作品も設置されていますが、圧巻はホーム階段下に吊り下げられた「Play it Again」という映画〈カサブランカ(1942)〉の音楽を奏でるピアノでしょう。アデル・アブデスメッドは建築空間に突如として強烈なオブジェを挿入することで人気の高い作家ですが、ここでも面目躍如たるものです。

 
 
 ことほど左様に、五井の機関区は子ども達、鉄道ファン以外の人たちにとっても楽しい空間になりました。はるか銀河への旅、人類が文明にかかわり始めた初心が伝わってきます。
(11月16日)


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