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2020.12.14
コラム

北川フラム総合ディレクター アーティストWEBインタビュー vol.11「島国で暮らすということ」

 今回は上総川間駅に作品を展開するジョアン・カポーテさんにお話を聞きました。ジョアンさんの作品は既に上総川間駅に設置されています。田んぼの真ん中にぽつんと佇む駅のそばにアート作品が出来上がり、近くの高校の学生さんや、お散歩途中の地元の方などが興味深そうに眺めたり、写真を撮っている姿が見られます。

 日本と同じく小さな島国であるキューバでは、コロナウイルスの影響をどのように受けていたのか。経済封鎖を受けるキューバならではの社会的側面からもお話いただきました。

参加者(順不同、敬称略)
ジョアン・カポーテ、北川フラム総合ディレクター、いちはらアート×ミックス実行委員会

 

北川総合ディレクター(以下、北川D):
今日はよろしくお願いします。ジョアンさんはこのパンデミックの間、どこに住んでいてどのような生活を送っていましたか?

 

ジョアン・カポーテさん(以下、ジョアンさん):
 今日はこのような機会をいただきありがとうございます。私は今キューバのハバナにいて、移動ができず、孤独な生活を送っていたので、こうしてお話する機会をいただけたのはとても嬉しいです。

 キューバは経済的に厳しい状況(アメリカによる経済的封鎖)が長く続いており、新型コロナウイルスによる打撃をまともに受けてしまいました。また、政府が輸送や移動に関して強く統制していたので、厳しい生活を強いられていました。そんな中でもこの状況に立ち向かい、どうにかして解決方法を見つけようという反骨精神が、キューバの人々のどこかにあるように思います。

 私もアシスタントと一緒にスタジオでの制作を再開しました。皆、この状況を恐れるのではなく、社会に戻って働き始めています。キューバは島国ですので、飛行機での移動が制限されると全く外国に行くことができなくなってしまいます。スタジオに籠って制作しなければならない状況が続いていましたが、来年はニューヨークやロンドンで展示をすることになったのでこのための仕事をしています。

 輸送も制限されているので、材料を手に入れるのが困難になってしまいましたが、展示を行うニューヨークやロンドンのギャラリーがサポートしてくださって制作を続けることができています。おかげで仕事があり、アシスタントを雇って仕事を与えて給料を支払うこともできているので、こういったことは止めてはならないと感じています。

 キューバという国は国際的に孤立している状況が長い国ですので、精神的に孤立する状況には慣れていますが、輸送が制限され食べ物が無いなど物理的に孤立するのは厳しいと感じています。

 

 

北川D:
 アートの役割、アーティストの役割は何だと思いますか?

 

ジョアンさん:
 人の数だけ答えがあると思います。もちろん、作品に社会の状況を映し出したり、社会の問題を照らし出したりすることはできますが、

 アートの一番の強みはダイバーシティです。各々の状況に対する、全てのアーティストのリアクションに価値があると考えています。アートにひとつの決まった役割があるとは考えていません。

 

北川D:
 そのお考えに非常に共感します。世界中のアーティストが、それぞれ違う形で表してくれる存在であると思います。

 

ジョアンさん:
 キューバには政治的なアプローチにより作品をつくるアーティストもいます。政治的なアプローチも、心理学的なアプローチもそれぞれのアーティストの手法ですので、平等に尊敬しています。現在は、新型コロナウイルスの影響もありますし、政治的にも熾烈な状況ですが、私はアートは未来に向けて作っているものだと思っています。

 ギリシャの哲学者の言葉に、「art is forever」という言葉があります。今の状況に対して作品を作るということも重要ですが、この状況が歴史的にどのような位置づけなのか、ということも考えていきたいと思っています。

 次の展覧会のタイトルを「レクイエム」としました。新型コロナウイルスだけでなく、戦争や飢餓など、様々な痛みについて考えなければいけない時であると考えています。世界中の孤独な魂、傷ついている人々に向けた展示を企画しています。

 

北川D:
 拝見するのを楽しみにしています。

 

ジョアンさん:
 展示はまずロンドンで開催され、ニューヨークへ巡回する予定です。

 最後になりますが、私はとても日本に行きたいと思っています。また、日本に行った際にひらめいた新しいアイディアがありますのでいつかお伝えしたいと思っています。

 

北川D:
 是非新しいアイディアを聞かせてください。私も先日テレビでキューバについての番組を見て、とてもキューバに行きたくなりました。

 

ジョアンさん:
 ご案内しますね。

 

北川フラム総合ディレクター アーティストWEBインタビューシリーズ
vol.1「コロナの状況下においてアーティストが持つ希望」
vol.2「離れた場所でのコミュニケーション」
vol.3「国境を越えて」
vol.4「作家の小さな日常の変化」
vol.5「時差12時間」
vol.6「リモート撮影会?」
vol.7「公共空間の新しい可能性」
vol.8「変わっていく作品」
vol.9「長い夏休み」
vol.10「大野昆虫記」