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2020.09.15
コラム

北川フラム総合ディレクター アーティストWEBインタビュー vol.8「変わっていく作品」

 今回は養老渓谷に作品を展開する竹腰耕平さんにお話を聞きました。
 竹腰さんは市原市養老渓谷のとある小学校跡地で、昨年の台風被害により倒木してしまった大銀杏の根をあらわにする作品を制作されました。
 1月のはじめから2か月近く養老渓谷に住み込み、地域のシンボルでもあった大銀杏にまつわる作品を地域の方々と一緒に作り上げていった姿が印象的だった竹腰さん。地域に入り作品を制作するアーティストは、コロナウイルス感染症によりどのような影響を受けたのか聞きました。

参加者(順不同、敬称略)
竹腰耕平、北川フラム総合ディレクター、いちはらアート×ミックス実行委員会事務局

 

 

北川総合ディレクター(以下、北川D):
自粛期間の間、竹腰さんはどこでどんな生活を送り、何を感じていましたか?

  

竹腰耕平さん(以下、竹腰さん):
 今は兵庫の自宅にいます。兵庫はもう暑いですね。この3か月間は、私がいるところが兵庫の田舎の方ということもあり、大きな影響は感じませんでした。

 お店に入るのに困ることはありましたが、テレビで見る東京の様子は離れた世界のように感じてしまうことがありました。

 離れた場所への移動ができなかったので、岐阜の実家に帰ることもできませんでした。春に家族みんなで会おうと計画していましたが、実現できませんでした。インターネット上のツールで話はしていますが、会うことができていないので気がかりです。

 

北川D:
 仕事はどうされていましたか?

 

竹腰さん:
 制作の仕事は一切できず、今も停滞しているような感じです。

 

北川D:
 仕事などができない時は何をして過ごしているんですか?私はベッドに寝そべってテレビを見たり本を読んだり、だらだら生きていました(笑)

 

竹腰さん:
 インターネットのサービスで、映画をずっと観ていました。散歩などは変わらずしていました。

 

 

北川D:
 アートに関わることで何かしたり、感じたりしたことはありますか?

 

竹腰さん:
 状況が落ち着き始めているようには思いますが、今後どうなるかわからないな、というのは本当に感じます。

 私の今までの制作スタイルは、色々な場所に行って滞在して制作しその場所に来て観てもらう、というものでしたが、もし今後それが世界的に難しい状況になっていったら、これまでの自分のスタイルでやっていくことが難しくなるのかなと感じました。
 今回、Instagramプロジェクト「Artists‘Breath」に提供した動画もそうですが、私は作品の制作過程を映像に収めており、撮りためたデータがたくさんあります。もっとその映像を使って、離れていても実感できる、世界に没入していけるような何かができないかと色々試しています。

 

 

北川D:
 養老渓谷の作品について聞かせてください。

 

竹腰さん:
 今日お話するにあたって、作品の写真を見返してみました。

 写真は3月のものですが、今は草が生えたり、土は崩れ色が変わったり、木も劣化していったり、雰囲気がうつろっていっているのではないかと思います。変わった姿を見てみたいと素直に思います。

 ずっと制作に関わってくださっていた菜の花プレーヤーズの方ともやりとりをしましたが、いちはらアート×ミックス2020が開催されていたとしたら会期終了後に作品はなくなってしまいますが、延期になり、ある意味変化を楽しむことができるねと言ってくださいました。作品として作った姿を観るということも目的ではありましたが、一年経ち変化していった姿を観るというのも面白みがあるのではないかと考えています。

菜の花プレーヤーズの皆さんや地域の皆さんと一緒に作品制作をする竹腰さん

 

北川D:
 月に一度など、定点観測をして公開することは意味がありそうですか? 養生の状況によっては木の根自体が見えないでしょうか。

 

竹腰さん:
 とても意味があることだと思います。土が崩れないように養生してありますが、木の根自体は見える状況です。

 

北川D:
 誰かやってくれると良いのですが。どなたかいませんか?

 

いちはらアート×ミックス実行委員会:
 毎日のように制作活動に参加されていた養老渓谷の皆さんにお願いしてみましょう。
 

北川D:
 楽しみにしています。
 

 

 

北川D:
 来年の3月20日に向けて何かやりたいことはありますか?

 

竹腰さん:
 もともと考えていた試みとして、作品を制作する過程や、地域の方に大銀杏にまつわるお話を聞いた際の動画を撮影しているので、これをまとめて観ることができるプラットフォームのようなものを作り、作品の近くにQRコードを置いて作品と一緒に観ていただければいいなと思っていました。3月まではそこに時間を充てて、充実させていければいいなと考えています。

 

 

北川D:
 今年から来年にかけての新たな試みなどはありますか?

 

竹腰さん:
 瀬戸内国際芸術祭に出品した作品を撤去するイベントを考えています。来週、現地を訪問する予定です。来月か再来月に撤去し、地域の方々と一緒に埋めたりできればと思っています。

 

 

北川D:
 他に何か感じていることはありますか?

 

竹腰さん:
 外にでる機会がなくなり、こもりがちになってしまったので早く外に出たいなと思っています。

 

北川D:
 確かに少し健康的になりましたね(笑)

 

竹腰さん:
 そうですね(笑)本当に早く外にでたいと思っています。来週瀬戸内に行くことができますし、徐々に外に出ることができるようになるのを楽しみにしています。

 

いちはらアート×ミックス実行委員会:
 作品は、地域の方も一緒に週に一度程度様子を見ているので安心してください。養老渓谷の皆さんも竹腰さんがまたいらっしゃるのを待っています。

 

北川フラム総合ディレクター アーティストWEBインタビューシリーズ
vol.1「コロナの状況下においてアーティストが持つ希望」
vol.2「離れた場所でのコミュニケーション」
vol.3「国境を越えて」
vol.4「作家の小さな日常の変化」
vol.5「時差12時間」
vol.6「リモート撮影会?」
vol.7「公共空間の新しい可能性」