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2012.10.25
コラム

アートフェスティバルの開催について

~市原市での開催の意味合いや可能性についての説明~

考え方のご説明をさせていただきます。
アートというのは一つのきっかけで、色々な意味で色々な事を繋ぐ為に非常に役に立ちます。言わば赤ちゃんみたいのもので、手間が掛かるし、ややこしいし、解りにくいし、生産力は無い。けれども、何か人と人を繋ぐ、場所と人を繋ぐ力が最もある。赤ちゃんを皆でかまったり、面倒を見る中で、そこに関わる人達が苦労もあるが楽しくなり、繋がっていく。そういった役割がアートにはあるのではないかと、最近少しずつわかってきました。
今、日本や世界の中で割りと見通しがあるのは、いわゆる彫刻や絵画だけでなく、色々な意味でのアートであり、先人達の生活の上に乗っかってきた、生きていく為の「あれやこれや」がアートだと思っています。一番の中心になるのは食べ物だと思います。
アートは"美術"と書きます。この"術"というのは色々な意味で、社会や文明などが、人間との関係や関わり方をあらわす"技術"なのです。それが最近の短い期間の中で、彫刻や絵画だけだと思われてきましたが、明治以前には、お祭りとか、食べ物とか、庭とか、床の間とか、そういったもの全てが広い意味での美術・アートだと思っています。世の中もその方向になってきました。ですから、美術館だけでなく、色々な試みが最近はアートとして言われてきているわけです。
市原では、アートが特に食やスポーツ等に関わってきます。おそらく世界で初めてスポーツや健康を取り込んで実施する試みになるのではないかと思っています。

臨海部に強力な工場地帯を持ち、牛久などの古い街があり、養老渓谷などの見事な渓谷や里山があります。色々な要素が全部ある場所です。また、東京からも1時間くらいで来られる場所です。これが歴史的、地理的な状況であります。
アートフェスティバルは、一種の観光ではありますが、ただ人が来ればいいという話ではなく、一番重要なのは幸せを感じる『感(かん)幸(こう)』です。地域の人達が幸せになる以外の目的があるはずがありません。その幸せというのはどういうものかと言うと、そこに住み着いてきた先人達が、自然と折り合いながら生きていく為にやってきた生活を、今その地域に住む人達が確認し、誇りを持つ。それを他所から来た人が寿いでくれる。そこに生まれる笑顔が幸せだと思っています。
観光というのは、他所から人が来て楽しみ喜んでくれることも一つですが、アート×ミックスでは、この地域の人達が本当に喜べるようなものをやりたいと思っています。以上がアート×ミックスの基本的な考え方です。
では、どのようにすれば皆さんに喜んでもらえるかと言うと、この地域の本当に特徴のある生活や食べ物など、色々な特徴を皆さんで検証してもらって、明らかにし、それをアーティストが見事に表現する。その過程の中で、地域のコミュニティーが元気なったり、産業が活発になったり、空家も活用されて減っていきます。こういったことが喜んでもらうことに繋がります。

私は、新潟県十日町市・津南町で2000年から開催している越後妻有アートトリエンナーレ 大地の芸術祭にも携わってきましたが、大地の芸術祭はリピーター率が非常に高く、3年に一度だけでなく、会期以外にも訪れてもらえるようになりました。地域の人と都市部の人の交流が極めて深く、それが地域の元気に変わってきました。
市原の場合は、今の越後妻有の様に一度に全ては出来ません。場所を決めて少しずつやっていくしかありません。ですが、続けていくことで多くの人が訪れ、楽しんでもらえると思います。
市原は首都部と非常に近く、奥深い渓谷があり、小湊鉄道や歴史もあり、色々な魅力をもっています。「晴れたら市原に行こう!」と言われるような首都圏のオアシスとして機能できると私は思っています。
晴れたら1時間で市原に行って、歩いても楽しいし、ピクニックもできるし、アートとも関われるし、色々な遊びもある。そういった場所をアートをきっかけにして作っていきたいと思っています。これが市原の特徴になるだろうと思います。

里山シンポジウムでの言葉

人が幸せを感じる「感幸」を、人が来てくれる「観光」が支えている。
芸術自体が目立つのではなく、その芸術がそこにあることで、その場所やそこにあった時間を際立たせる。
大地の芸術祭での芸術とは、その場所でしか見られない芸術である。