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2021.12.08
コラム
見どころ紹介!北川フラム連載 しっかり毎日とはいかないけれど「ディレクターズ カット」第4号
師走朔日のアート×ミックスツアー。家を出た時は大雨でしたが、五井駅では曇り、その後は快晴となって富士山の全容もゆったりと見え、茶染がかったような夕暮れでツアーは終わり、一行は大喜びでした。
今回は月出工舎の作品についてです。小湊鉄道から離れているし、手掘りのトンネルを通っていく僻地校で、2007年に閉校になりました。2014年のアート×ミックスで月出工舎はデビューし、その後、展示・工房・レジデンスができるように改修し、この間アーチストの岩間賢さんのディレクションのもと地域住民と「月出の森構想」がスタートし、このパンデミックを乗り越えての作品発表で楽しみにしていました。
一言で言うと期待以上の作品の出来映えでした。正門階段から入れば鈴村敦夫による自然石や自分で調合した陶片を使った壁面の改修があり、その丁寧な仕事に驚かされます。ここから焼き芋などを焼いてくれる、校庭にあるチョウハシトオルの屋外テントを見てプールに上ると岩間賢が過去2回のアート×ミックスで作った《蔵風得水》と《うたつち》という木の造形のうえに土がかぶっている巨大な彫刻が二基見える。この良さをぜひ皆さんに知っていただきたいのです。
そこから少しあがった空き地に、これもまた巨大な多孔の木の造形《ほとり》があって、来年にはこれが蜜蜂の大アパートになるのだという。これも見ものです。その横に来田広大の《風待ちの家》があり、暗い家に妖しげな展示がしてあって少し恐い。
校舎から少し降りたところには田中奈緒子の《彼方の家》があります。置き去りにされた家具や調度類、家の造作の断片がガラスや障子越しに入ってくる微妙な光に照らされ、或いは影になって室内の陰影が心に沁み入ってきます。永い時間を使って家と対話しつづけた過程が見事です。床にひかれた油のような塗料が、水が引いたあとの家並みを想い出させもします。じっくりとたたずんで下さい。
校内に入ればおいしいコーヒーを出してくれる部屋に風煉ダンスによる《大きな周一》があり、その活動のビデオと黒板に描かれた周辺の地図があり、これが楽しい。
次の部屋には舞踏団 トンデ空静の活動《半島行脚と水鏡の踊り》があって彼らの踊りが知れて心が洗われる思いです。体育館には鍛冶瑞子による改修で、ここでみた岡博美の天井から吊るされた染物はやわらかに天から降りてきた贈り物に見えます。
竹村京の《東京の記憶の家 (2019-2020)》の大きな壁を使った絹糸による画もまた美しい。この体育館での繊細で大柄な仕事はとても良かった。
二階の来田広大の映像も約400年前の御宿に難破したメキシコ船サン・フランシスコ号を辿るもので、心に迫りました。月出は集落と建物とアートが実によく調和して楽しい場所でした。
(12月6日)
写真撮影:中村脩