ニュース
2021.11.29
コラム
見どころ紹介!北川フラム連載 しっかり毎日とはいかないけれど「ディレクターズ カット」第3号
旧平三小学校はその存在じたいが夢のような世界にあります。学校の裏山は自然観察に絶好の里山の林で今は紅葉の盛り。校庭からトンネルをくぐった低地には川廻しによって出来た水路があって、整備が行き届いた広い校庭をふくめて遊び場にもことかかない。平成28年に閉校になった校舎は今も綺麗に管理され、週末には不定期に市場が今も開かれています。コロナ禍による延期があり、事情が少し変わりましたが、地域を美しく守り育てようとしている住民の気持ちに伴走しようと平三プロジェクトは考えられました。
一階には開発好明の《市原100人教頭学校キョンキョン》のための教室があります。これが実に面白く役に立つ。知恵と愛情にあふれたその道の達人が、開発先生の人柄によってイキイキと授業をしてくれます。(日程を調べて参加してください)
階段の踊り場と教室には栗真由美の《ビルズクラウド》。かつて実際にあった一軒一軒の家を古い写真から写しとった百数十軒はそのやわらかな光のなかにあたたかいコミュニティのありかを伝えてくれます。(そのグッズもありますよ)
私が行ったときには会期中の2か月かけて車輪がゆっくり降下していく秋廣誠の《時間鉄道》はどうじっくり観察しても動いているようには見えなかったし、大野修平の《Bugs dress / Pollinator》の中には蝶やテントウムシが乱舞していなくてホッとしたのですが、これも延期、延期が続いたせいなのでしょうか。昆虫に夢中になる少年や物の道理を道具立てする少女は羨ましいものでした。
キム・テボンの《ドリームキャッチャー》は今も夢を社会化しているキムさんの面目躍如たる宇宙船指令室でしたし、ブラジルのリオの貧しい地域の子ども達と楽しいワークショップをして送ってくれたマリア・ネポムセノの《知るは海》からは生の輝きが伝わって来るようでした。
長谷川仁さんの《混色》紙吹雪は子ども達がつめこみすぎて一旦休憩中でしたが、オーストリアのミカーラ・ダウアーの理科室の不思議な透明な彫刻も夢の一つだったように思えます。バハマのラヴァル・モンローの《サンクチュアリ》も、かつて子どもであった作家が社会の現実のなかで作りあげた社会観かもしれません。曽我英子のアイヌの伝統料理の《ご近所さんの食事》も異なった世界へのオマージュのようでした。ここには夢とともに異文化についても考えさせてくれるものが多いようにな気がします。
冨安由真。屋上への踊り場にあわい光のテーブルがあって《ヤコブの梯子(眠らない夢)》と書かれている。またもや夢、しかしそれは天国への上昇なのでした。 いったん外へ出ると外階段と配膳室のエレベーターが外と内で呼応しあう奇想天外な仕掛けがしてあって驚きかつ美しさに心をうたれました。説明はうまくできませんが、これこそ作家が幼少期に見た「落下する夢」を《オズの魔法使い》のテキストにした、建築の内部と外壁、上昇と下降、鏡にうつった世界、天と地、それらの物理的概念を通して美術化した滅多に見られない体験でした。
撮影:中村脩
旧平三小学校でゆっくり時を過ごして下さい。グラシアス・ア・ラビーダ(人生よありがとう)と言いたくもなります。 (11月27日)
一階には開発好明の《市原100人教頭学校キョンキョン》のための教室があります。これが実に面白く役に立つ。知恵と愛情にあふれたその道の達人が、開発先生の人柄によってイキイキと授業をしてくれます。(日程を調べて参加してください)
階段の踊り場と教室には栗真由美の《ビルズクラウド》。かつて実際にあった一軒一軒の家を古い写真から写しとった百数十軒はそのやわらかな光のなかにあたたかいコミュニティのありかを伝えてくれます。(そのグッズもありますよ)
私が行ったときには会期中の2か月かけて車輪がゆっくり降下していく秋廣誠の《時間鉄道》はどうじっくり観察しても動いているようには見えなかったし、大野修平の《Bugs dress / Pollinator》の中には蝶やテントウムシが乱舞していなくてホッとしたのですが、これも延期、延期が続いたせいなのでしょうか。昆虫に夢中になる少年や物の道理を道具立てする少女は羨ましいものでした。
キム・テボンの《ドリームキャッチャー》は今も夢を社会化しているキムさんの面目躍如たる宇宙船指令室でしたし、ブラジルのリオの貧しい地域の子ども達と楽しいワークショップをして送ってくれたマリア・ネポムセノの《知るは海》からは生の輝きが伝わって来るようでした。
長谷川仁さんの《混色》紙吹雪は子ども達がつめこみすぎて一旦休憩中でしたが、オーストリアのミカーラ・ダウアーの理科室の不思議な透明な彫刻も夢の一つだったように思えます。バハマのラヴァル・モンローの《サンクチュアリ》も、かつて子どもであった作家が社会の現実のなかで作りあげた社会観かもしれません。曽我英子のアイヌの伝統料理の《ご近所さんの食事》も異なった世界へのオマージュのようでした。ここには夢とともに異文化についても考えさせてくれるものが多いようにな気がします。
冨安由真。屋上への踊り場にあわい光のテーブルがあって《ヤコブの梯子(眠らない夢)》と書かれている。またもや夢、しかしそれは天国への上昇なのでした。 いったん外へ出ると外階段と配膳室のエレベーターが外と内で呼応しあう奇想天外な仕掛けがしてあって驚きかつ美しさに心をうたれました。説明はうまくできませんが、これこそ作家が幼少期に見た「落下する夢」を《オズの魔法使い》のテキストにした、建築の内部と外壁、上昇と下降、鏡にうつった世界、天と地、それらの物理的概念を通して美術化した滅多に見られない体験でした。
撮影:中村脩
旧平三小学校でゆっくり時を過ごして下さい。グラシアス・ア・ラビーダ(人生よありがとう)と言いたくもなります。 (11月27日)