ニュース
2021.11.22
コラム
見どころ紹介!北川フラム連載 しっかり毎日とはいかないけれど「ディレクターズ カット」第1号
房総里山芸術祭 いちはらアート×ミックス2020+が始まりました。感無量です。昨年の三月以降新型コロナウイルスが猖獗を極め、その対処の仕方が右往左往するなかで、人々はどう生きていくかを真剣に考え、食べて生きていくために必死に生きたと思います。いのちに向き合いました。
個人の気持ちの表明、手紙によるアートメッセージ、バルコニー展覧会、映像による仮想美術館の発信等、いたるところで美術は赤心を語り、希望の連帯を表明しました、が、美術の場はぐんぐん減っていきました。美術館、公演、音楽会とともに芸術祭は軒並みに中止、延期のやむなきに至りました。田舎の爺さま、婆さまが他所からの人を拒否するのは分かります。まだまだ地域型芸術祭の目的とそれがもたらす展望と効果を知ってもらわねばいけない、もっと一緒に作業する喜びと、人が来られて感動する様子を見てもらいたいと思います。さらに一層工夫と努力を重ねたいと思います。
さて、オープン当日、ホームで市原市消防局音楽隊ブラスバンドの《銀河鉄道999》が響き、お客様はトロッコ列車の客席からの参加です。小出譲治実行委員長、オランダ、オーストラリア、メキシコ大使館、世界銀行、アーティスト達の挨拶と紹介がありオープニングツアーが始まりました。晴天のなか皆さん大喜びだったそうです。チバニアンの現場では磯辺行久さん参加のなかで熱気球が上がりました。養老川の古い流れの跡が見えたでしょうか。 全体の作品の質は高く面白い。夜6時には皆既月食が見えた思い出深い出発となりました。私は現場のチェックとツアーへの合流です。いよいよこの1年8か月のコロナ禍を超える美術の棹尾を飾るべき芸術祭が始まりました。各アートサイトでは地元町会の人々も参加して歓びの迎えです。
この芸術祭は房総半島東京湾沿岸にある工業地帯、ベッドタウンとともにある市原市南部を1917年から走り続け、地域の人とともに動いてきた小湊鐡道を基軸として里山の時間と空間を体験するいわば鉄道(を軸とした)芸術祭の新しい試みです。小湊鐡道とその沿線は、蒸気機関車の発明とともに始まった人類と機械の幸福な時期、農業とコミュニティが人間の生活と程よく共存できた世界と地域を通して来し方、世界を覗くには格好のプロジェクトです。 五井機関区、南極ビエンナーレを主催したアレクサンドル・ポノマリョフの《永久機関》は今も残る機関区の鍛冶屋場の中に、そんな時期の研究室、実験室の雰囲気を伝えてくれるパイプと水と空気の激しいピストン運動を通して「永久運動」を彷彿とさせてくれます。 《Questions of Evolution -進化の問題-》は三つの機関車とそれらが合流する鉄路が文明の進化のなかで果たした逞しい夢のありかを伝えてくれるようです。ここにウクライナからリモートで参加した、ザンナ・カダイロバは彼女の住む日本から8000km離れている土地の鉄道から見える風景を暗い客室で見せてくれます。人が乗って揺れる客室はあたかもこれから列車が「出発進行!」するような気分です。
JR内房線と連結している小湊鐡道のホーム階段下には三人のアーティストの作品があります。レオニート・チシコフは7つの桶(実はバケツ)に月を映しています。これは養老渓谷駅のホームにあるチシコフが運んだ月に対応していますが、かれは五井という土地の由来が名刀に向く名水を探した5つの井戸にあるという逸話から引いているのですが、この鉄道が宇宙への旅となるための出発にもなっているのです。 ターニャ・バダニナの《門》も彼女の駅ごとの3つの作品の物語の出発になっています。暗くなるとこの白い門は清浄な天への門であることが良くわかってくる、美しい作品です。 アデル・アブデスメッドはアップライトピアノを彼らしいやり方で吊り下げました。名映画《カサブランカ》でハンフリー・ボガードとイングリット・バーグマンの別れのシーンに鳴っている音楽が聞こえてきます。思えば駅はまさに旅立ちの期待と別れの寂しさの舞台でした。五井駅のホームと機関区はアートミックスの出発の場所になりました。 これからも作品について書いて行きます。 (11月19日)
さて、オープン当日、ホームで市原市消防局音楽隊ブラスバンドの《銀河鉄道999》が響き、お客様はトロッコ列車の客席からの参加です。小出譲治実行委員長、オランダ、オーストラリア、メキシコ大使館、世界銀行、アーティスト達の挨拶と紹介がありオープニングツアーが始まりました。晴天のなか皆さん大喜びだったそうです。チバニアンの現場では磯辺行久さん参加のなかで熱気球が上がりました。養老川の古い流れの跡が見えたでしょうか。 全体の作品の質は高く面白い。夜6時には皆既月食が見えた思い出深い出発となりました。私は現場のチェックとツアーへの合流です。いよいよこの1年8か月のコロナ禍を超える美術の棹尾を飾るべき芸術祭が始まりました。各アートサイトでは地元町会の人々も参加して歓びの迎えです。
この芸術祭は房総半島東京湾沿岸にある工業地帯、ベッドタウンとともにある市原市南部を1917年から走り続け、地域の人とともに動いてきた小湊鐡道を基軸として里山の時間と空間を体験するいわば鉄道(を軸とした)芸術祭の新しい試みです。小湊鐡道とその沿線は、蒸気機関車の発明とともに始まった人類と機械の幸福な時期、農業とコミュニティが人間の生活と程よく共存できた世界と地域を通して来し方、世界を覗くには格好のプロジェクトです。 五井機関区、南極ビエンナーレを主催したアレクサンドル・ポノマリョフの《永久機関》は今も残る機関区の鍛冶屋場の中に、そんな時期の研究室、実験室の雰囲気を伝えてくれるパイプと水と空気の激しいピストン運動を通して「永久運動」を彷彿とさせてくれます。 《Questions of Evolution -進化の問題-》は三つの機関車とそれらが合流する鉄路が文明の進化のなかで果たした逞しい夢のありかを伝えてくれるようです。ここにウクライナからリモートで参加した、ザンナ・カダイロバは彼女の住む日本から8000km離れている土地の鉄道から見える風景を暗い客室で見せてくれます。人が乗って揺れる客室はあたかもこれから列車が「出発進行!」するような気分です。
JR内房線と連結している小湊鐡道のホーム階段下には三人のアーティストの作品があります。レオニート・チシコフは7つの桶(実はバケツ)に月を映しています。これは養老渓谷駅のホームにあるチシコフが運んだ月に対応していますが、かれは五井という土地の由来が名刀に向く名水を探した5つの井戸にあるという逸話から引いているのですが、この鉄道が宇宙への旅となるための出発にもなっているのです。 ターニャ・バダニナの《門》も彼女の駅ごとの3つの作品の物語の出発になっています。暗くなるとこの白い門は清浄な天への門であることが良くわかってくる、美しい作品です。 アデル・アブデスメッドはアップライトピアノを彼らしいやり方で吊り下げました。名映画《カサブランカ》でハンフリー・ボガードとイングリット・バーグマンの別れのシーンに鳴っている音楽が聞こえてきます。思えば駅はまさに旅立ちの期待と別れの寂しさの舞台でした。五井駅のホームと機関区はアートミックスの出発の場所になりました。 これからも作品について書いて行きます。 (11月19日)