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2020.10.09
コラム

北川フラム総合ディレクター アーティストWEBインタビュー vol.9「長い夏休み」

 今回は、ウクライナからの参加アーティストであるザンナ・カダイロバさんへのインタビュー。
 キエフと市原をつなぐ作品を展開する予定だったザンナさん。世界中で同じような経験を共有したこの間、どのような状況をどのように過ごしていたのか聞きました。ザンナさんと、通訳のクラライさんを含め、キエフ-パリ-東京-市原の4か所をつないだインタビューとなりました。

参加者(順不同、敬称略)
ザンナ・カダイロバ、北川フラム総合ディレクター

通訳等協力
クラライ・アブダリコヴァ(Galleria Continua /パリ在住)

(左上から時計回りに)ザンナ・カダイロバさん、北川フラム総合ディレクター、いちはらアート×ミックス実行委員会、クラライ・アヴダリコヴァさん

 

北川総合ディレクター(以下、北川D):
 新型コロナウイルス感染症の影響により、人々は断絶や繋がりの認識など、世界中で同じ経験を共有しているということが起きています。これは非常に貴重な機会でもあったように思います。
 日本では状況が落ち着いてきていますが、ウクライナはどのような状況でしょうか?

 

ザンナ・カダイロバさん(以下、ザンナさん):
 ウクライナでは3月17日から自粛が始まり、公共交通機関なども全て閉鎖されました。医療関係者や消防士、生活に欠かせない職業の人しか地下鉄に乗ることができませんでした。

 政府の対応は素早く、よかったと思っています。4000万人の人口に対して40000人の患者と1000人の死者しか出なかったので、感染率はかなり抑えられたと思います。経済的にはかなり難しい決断でしたが、政府はよくやったと思います。

 例えば隣国のロシアは、素早い対応ができなかったため厳しい状況になっています。普段、ウクライナ政府はあまり統率力が無いように思いますが、今回はリーダーシップを発揮しました。
 このコロナの事態は、ヨーロッパのような先進国にも発展途上国にも関係なく同じように被害をもたらしている、と感じています。

 ウクライナでは8月末までゆるやかな自粛が続きました。地下鉄も走っているしカフェやバーは開いていますが、皮肉なことに美術館やギャラリーは開いていません。
 これはばかばかしいことだと思っています。なぜなら美術館が地下鉄より混雑することは決してないからです。キエフはパリのように海外からの観光客がたくさんいるわけでもなく、美術館やギャラリーを閉めてダメージをうけるのは地元の人々なのです。

 

 

北川D:
 この間、ザンナさんはどのように過ごしていましたか?

 

ザンナさん:
 この時間はとても面白い瞬間ではありました。3か月間家にこもっており、普段、こんなにも休むことはできないため、強制的な夏休みのようでした。普段は時間が無く、手を付けることができなかった、家のリノベーションに取り掛かっていました。

 5か国で5つの展示を予定していましたが全てキャンセルになったり、オンラインでの開催になったりしました。こんなに長い時間ウクライナにいたのは久しぶりです。

 

 

北川D:
 今後の計画などはありますか?

 

ザンナ:
 先週は、ポーランドでビエンナーレに参加する予定でしたが、感染者が多い地域に行くことが嫌だったのと、渡航後2週間隔離されるなどのことから間際で行かないことにしました。ビデオで設営の指示をするという初めての経験をしました。

 来週からはウクライナの文化人があつまる「DND」という組織による取組が始まります。
 活動の一つとして、取り壊されそうな古いモダニズムのホテルに行って、セラミックなどの装飾を集めてミュージアムに送る、というものがあります。このほかにも古い工場などで材料を集め、自分の作品をつくる準備をしています。

 

 

北川D:
 市原での作品について、お考えはありますか?

 

ザンナ:
 市原での作品は、一つの地球にある二つの列車をつなぐ、というプロジェクトでした。キエフの列車には思い入れがあったため、特に完成させたい作品でした。

 都市を離れて自然に回帰していく、というテーマがこのパンデミックに通じるものがあるのではないかと思います。パンデミックを経験して、作品の意味は変わるかもしれませんが、作品自体は変わらない姿でお見せしようと考えています。

 

北川D:
 ありがとうございました。

 

 

北川フラム総合ディレクター アーティストWEBインタビューシリーズ
vol.1「コロナの状況下においてアーティストが持つ希望」
vol.2「離れた場所でのコミュニケーション」
vol.3「国境を越えて」
vol.4「作家の小さな日常の変化」
vol.5「時差12時間」
vol.6「リモート撮影会?」
vol.7「公共空間の新しい可能性」
vol.8「変わっていく作品」